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令和5年度 英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業 課題解決型廃炉研究プログラム 選定課題

■課題解決型廃炉研究プログラム 合計9課題

■令和5年度選定課題:7課題

No. 提案課題名 研究代表者
[所属機関]
参画機関 概要
1 遮蔽不要な耐放射線性ダイヤモンド中性子計測システムのプロトタイプ開発 金子 純一
[北海道大学]
高エネルギー加速器研究機構、産業技術総合研究所、名古屋大学、九州大学、日本原子力研究開発機構 福島第一原子力発電所廃炉作業でニーズの高い、高γ線下の微弱中性子線計測を遮蔽なしでできるシステムのプロトタイプを開発する。本システムはダイヤモンド中性子検出素子と耐放射線性シリコン集積回路から構成され、部品レベルではそれぞれ積算線量10MGy以上、4MGy以上の耐放射線性を有し、1.5kGy/hのγ線線量率環境下で安定動作した実績を持つ。将来的な用途として、デブリ調査用中性子検出器、臨界近接監視モニタ、圧力容器内ドライチューブ調査用中性子検出器等が想定される。本開発では5mm 角相当のダイヤモンド検出素子100 枚規模からなるプロトタイプを開発し、システム構築技術の獲得とシステム性能を評価する。併せて未臨界度評価手法の開発をすすめる。なお、実機には1000枚規模でダイヤモンド素子が必要なため、別途、福島県にベンチャーを立ち上げて量産体制構築を目指している。
2 簡易非破壊測定に向けた革新的なn・γシンチレーション検出システムの開発 鎌田 圭
[東北大学]
東京大学、産業技術総合研究所、日本原子力研究開発機構 福島第一原子力発電所取り出しデブリのスクリーニングならびに連続監視に資する、革新的なn・γシンチレーション放射線検出システムを開発する。これまでの研究により、中性子線とγ線計測のシンチレータとして6LiBr-LaBr3共晶体等が優れた発光特性を有することを明らかにしており、本研究では、より微少な共晶体結晶を製造して光検出器とパッケージ化するとともに、高速デジタルのnγ波形解析処理システムを開発し、多様な放射線場での特性評価と、ホットセルでの実証試験(JAEA)を行う。なお、素子としての計測目標は10Gy/h、10/cm2・sとし、遮蔽により1kGy/hを可能とする。また、素子が安価でリーズナブルな計測システム構築が目指せるため、製品化実績のある企業との連携も視野としている。
3 ペデスタル部鉄筋コンクリート損傷挙動の把握に向けた構成材料の物理・化学的変質に関する研究 五十嵐 豪
[名古屋大学]
東京大学、東北大学、日本原子力研究開発機構 福島第一原子力発電所1号機のペデスタルで見られた、鉄筋を残したままコンクリートだけが崩落した破損挙動のメカニズム解明に向けた研究。現場情報が限られており、まずは文献調査によりコンクリート破損挙動シナリオの仮説を立てる。この上で、鉄筋コンクリートの受けたとみられる高温水蒸気や冷却過程での衝撃的な力によるスポール破壊、コンクリートに含まれるセメントや骨材の膨張、あるいは鉄筋の腐食膨張によるコンクリート基材のみの破壊などにおける要素挙動データを取得する。この結果や更新される公開の現場情報を考慮しつつ、コンクリートやモルタル、鉄筋を含む模擬部材による総合試験により、仮説の検証を実施する。
4 動画像からの特徴量抽出結果に基づいた高速3次元炉内環境モデリング 中村 啓太
[札幌大学]
岩手県立大学、日本原子力研究開発機構 福島第一原子力発電所の廃炉に向けて、原子炉格納容器(PCV)および原子炉建屋内を調査において撮影された動画像を入力とし、指定された時間、動画像から抽出された特徴量に応じて、周辺情報を補強した上で情報量が大きい立体復元手法を選択し、作業空間を3次元モデリングする研究開発を行う。研究課題は、(1)シミュレータを活用した写真測量における復元時間制限を考慮した画像特徴量と立体復元精度の関係、(2)動画像からの迅速な3次元 モデリング手法の研究開発、(3)深層学習に基づく画像・点群データのセグメンテーションと高品質な3次元モデリング、という3項目で構成される。各研究課題を通じて、動画像からの迅速な3次元モデリング手法を導入したシステム構築を目指し、炉内および建屋内の差分を検出しつつ現場状況を把握することに貢献する。
5 放射性コンクリート廃棄物の減容を考慮した合理的処理・処分方法の検討 小崎 完
[北海道大学]
福井大学、電力中央研究所、日本原子力研究開発機構 福島第一原子力発電所の廃炉で大量に生じる放射性コンクリート廃棄物に対して、再利用・再資源化を含む合理的な処理・処分を検討するため、放射性核種のセメント-骨材間の移行・分配挙動などを実験的に明らかにするとともに、3次元核種濃度分布の計算モデルを構築する。また、コンクリート廃棄物再利用・再資源化のための処理方法を調査するとともに、加熱条件下での骨材分別実験を行い、条件の最適化ならびに発生する放射性ダスト量の評価を行う。さらに、処理物の品質に応じた再利用法を検討し、また、廃棄体化した放射性廃セメントの固相分析ならびに放射性核種の浸出試験を行い、その特性を評価する。一方、再利用ならびにセメントの廃棄体化におけるクリアランスの運用条件や廃棄体の制約などの1F固有の要件を検討する。また、以上の結果を総合し、解体から最終処分までの全工程を俯瞰して、コンクリートの再利用・再資源化を行う利点・課題を抽出し、放射性廃棄物管理シナリオを評価する。
6 高バックグラウンド放射線環境における配管内探査技術の開発 鳥居 建男
[福井大学]
大阪大学、神戸大学、東北大学、埼玉大学、日本原子力研究開発機構 1F廃炉作業においては、多くの配管等を切断・撤去する必要があるが、配管等の内部状況が不明なところも少なくない。内容物の有無、液体の有無、放射性物質濃度、水素濃度等が分からない場合、適切な切断方法や対策(内容物の飛散防止対策等)を選定することが困難となる.特に、配管内においてα核種の有無の把握で事故進展の把握や廃炉作業における放射線防護の観点から極めて重要である。本事業では、レーザー等を用いた非破壊検査により配管内の情報を取得するとともに、配管内のα核種の有無を中心に内部状況を配管外、および小径の内視鏡型測定器の開発を行うことにより、配管等の内部状況を明らかにする。特に、高線量率環境下におけるα核種の可視化、β核種の弁別判定を行う装置を開発するとともに、配管内の内容物を調査する技術を開発する。大量のβ・γ線放出核種によるバックグラウンド放射線環境の中での廃炉作業で幅広く適用可能な要素技術であり、その利活用の範囲は大きい。
7 PCV気相漏洩位置及び漏洩量推定のための遠隔光計測技術の研究開発※ 椎名 達雄
[千葉大学]
レーザー技術総合研究所 福島第一原子力発電所では、窒素封入によりPCVは微正圧に保たれているが、上部の気相部では建屋内への気体の漏洩が想定されている。漏洩箇所、漏洩量をオンサイトで検知・測定するために、光センシングによる計測は指向性や空間分解能の点で大きな利点がある。本申請では、ライダーを始めとする遠隔光計測システムによる漏洩箇所の位置特定と、その位置における漏洩の可視化手法を開発し、課題解決を試みる。ライダーでは視線方向に距離分解ができ、建屋内での壁面・配管と、その周囲の気相分子(窒素N2、水蒸気H2Oなど)および浮遊粒子(エアロゾル)からの信号を分離して観測できる。また、レーザー光と高感度画像センサーを組み合わせたフラッシュライダーと、光波の干渉を利用した高感度のシアログラフィーによって漏洩箇所の画像化・可視化を図り、漏洩量の推定を目指す。これら複数の手法の比較を通じて、漏洩箇所を特定する際の位置分解能と可視化可能な漏洩量の検出下限を明らかにする。

※椎名代表(千葉大学)研究課題は特定ニーズ「PCV の気相の漏洩をオンサイトで検知できる技術」の枠で採択されています。

■国際協力型廃炉研究プログラム(日露原子力共同研究)より移管:2課題

No. 提案課題名 研究代表者
[所属機関]
参画機関 概要
1 福島第一発電所2,3 号機の事故進展シナリオに基づくFP・デブリ挙動の不確かさ低減と炉内汚染状況・デブリ性状の把握 小林 能直
[東京工業大学]
九州大学、日本原子力研究開発機構 福島第一原子力発電所2、3号機炉内状況把握における重要課題である、シールドプラグ下高線量の原因究明、事故時のCs移行経路や、Csの構造材付着・堆積状態の解明および先行溶落したと推定される金属リッチデブリ特性(ホウ素、核物質の分布、等)評価を行うため、事故進展最確シナリオ評価に基づく材料科学的アプローチとして、事故進展シナリオ解析(および感度解析)から、事故時化学環境変化を推定し、Cs化学形解析と検証試験によるCs移行・吸着・堆積メカニズムの理解および溶落・堆積過程での金属リッチデブリの特性変化(酸化・凝固過程での、ホウ素・核物質の偏在、金属成分の残留など)の理解を進展させ、事故進展解析にフィードバックするとともに、事故解析(マクロな理解)・材料特性メカニズム(局所反応の理解)の観点で炉内状況推定精度を向上させ、廃炉事業者による燃料デブリ取出し方法の検討に対し基礎知見を提示する。
2 非接触測定法を用いた燃料デブリ臨界解析技術の高度化 小原 徹
[東京工業大学]
産業技術総合研究所、長岡技術科学大学、東京都市大学 非接触のアクティブ中性子法により核分裂性ウラン、プルトニウム、含有水素量を定量化し、燃料デブリの臨界安全上の特性を評価することができる測定システムを開発し、同時に燃料デブリ取出し作業員の安全確保方策の確立に貢献する基盤技術として多領域積分型動特性解析コードを開発し、燃料デブリの動きを含む燃料デブリ弱結合炉体系の臨界影響評価を実施できるようにする。開発に当たっては現場適用性の確認をする。