原子力システム研究開発事業

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平成19年度採択課題事後評価の結果

原子力システム研究開発事業 −基礎研究開発分野−
若手対象型 事後評価総合所見

研究開発課題名:超臨界水利用MOX燃料リサイクルと材料健全性に関する技術開発
(国立大学法人東北大学)
代表研究者(研究機関名):山村朝雄(国立大学法人東北大学)
森川篤史((株)東洋高圧)
酒井宏典(日本原子力研究開発機構)
研究期間及び予算額:平成19年度〜平成21年度(3年計画)   56,512千円
項目 要約
1.概要及び個別評価 【概要】
 ピューレックス法再処理が抱える放射性廃棄物の発生、経済性、核拡散抵抗性等の問題への対処のため、核分裂生成物を簡素な前処理および超臨界水処理による酸化物燃料製造過程で除去するMOX燃料リサイクル技術を開発し、安全性を保証する材料健全性に関する開発を行う。

【目標の立て方】
  • 超臨界水を利用した使用済燃料再処理を提案し、酸化物製造プロセスでは、反応容器材料の健全性まで検討し、狙いは適切であった。
  • 燃料製造において必要な目標を立てているが、DFと炭素含有量について具体的な数値設定がなく、Naの含有量についての考え方が明確でないなど、どこに重点が置かれているのか曖昧であった。
  • ウラン燃料のみならず、MOX燃料製造においても粉末特性とペレット製造との相関を明確にすることが最重要課題である。取り組む課題の問題点等を把握した上で目標を設定しているものの、粉末特性とペレット製造との相関を明確にすることが目標として含められていなかったのは残念であった。
  • 本研究対象の出発物質を供給するための前段の工程においてなされるAmとCmとをU、Puと分離せずに使用済燃料溶解液から回収する技術は、既に開発済みとしているが、Am、CmはU、Puに同伴しないとの報告もあるので、AmとCmの回収法の検討が別途必要になる。
【研究開発計画】
  • 超臨界水を用いたMOX燃料リサイクル確立に向けて、FP分離、MOX燃料製造技術開発から容器材料の健全性評価まで、総合的な研究開発計画が立てられている。それぞれの研究項目に対して解決すべき要点を明確にした上でそのための研究手法を適切に選択している。
【目標達成度】
  • 多岐にわたる研究項目を丁寧に実施しており、適切な研究実施者と組むことで、超臨界水処理MOX燃料加工に関する研究や容器健全性に関する材料開発とその腐食に関する評価に関して、目的を達成した。特許出願等にも反映されている。
【研究開発成果】
  • 超ウラン元素を取り扱う上で難しい問題があったと思われるが、実際に超ウラン元素を用いた実験を行い、十分評価された実験結果を出しており、貴重な研究開発成果が得られた。
  • MAを含まないMOX燃料の製造については十分な成果が得られた。
  • 超臨界水にエタノール等を混入させることによるUO2生成反応の機構を詳細に解明してほしかった。
  • 材料の健全性に対する課題は、解決の糸口を見つけた段階という評価となる。
【研究開発の波及効果】
  • 超臨界水を用いた酸化物燃料粉末の新たな調製法として水熱合成法の有効性が示唆されている。燃料の製造方法としては期待しうる方法なので、基礎研究の段階ではあるが、燃料製造技術分野・燃料物性研究分野への波及効果は期待できる。
  • 超臨界水容器材料健全性に関する研究では、超臨界水の耐食性を有する材料開発、超臨界水の腐食の検討、腐食に耐性ある材料の開発など、一定の成果が出ており、期待できる。
2.総合評価
 評価:A
  • 超臨界水を利用した使用済燃料再処理を提案し、超臨界水反応容器材料の健全性まで検討し、適切な研究実施者と組むことで、初期の目標を概ね達成しており、十分な成果を挙げたと評価しうる。
  • DF、Na残留量、炭素残留量、超臨界水系での反応機構については、検討が充分ではないので、今後の研究において、反応機構を含め、基礎的なデータを取得して、次のステップに発展させて頂きたい。
  • 今後研究を進める上では、前段プロセスの成立性、アクチノイドの回収率、最終製品の純度についての評価も必要である。
S)特に優れた業績が挙げられている。
A)優れた業績が挙げられている。
B)想定された業績が挙げられている。
C)想定された業績が一部挙げられていない。
D)業績がほとんど挙げられていない。
3.その他
  • 成果を広く活用してもらうために、専門家のレビューを受けた論文を、できるだけ数多く発表して頂きたい。
  • 取り扱いに制限のある状況の下、U、Npを用いた実験研究がなされていること、多人数(11-13人/年)のプロジェクトを率いたことは評価できるが、外部専門家による定期的な評価を受けていればなお良かった。
  • 本リサイクルシステムの成立性に関し、MA(Am、Cm)の挙動に対する再評価が必要と考えられる。

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Japan Science and Technology Agency 原子力システム研究開発事業 原子力業務室