原子力システム研究開発事業

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平成19年度採択課題事後評価の結果

原子力システム研究開発事業 −基礎研究開発分野−
若手対象型 事後評価総合所見

研究開発課題名:分子シミュレーションによるMA含有MOX物性のモデル化に関する研究
(国立大学法人東京大学)
代表研究者(研究機関名):小田卓司(国立大学法人東京大学)
研究期間及び予算額:平成19年度〜平成22年度(3年計画)   41,246千円
項目 要約
1.概要及び個別評価 【概要】
 高速増殖炉サイクルにおいてMA 含有MOX 燃料を実用化する際の不確実性を低減するために、分子シミュレーションを用いて現象を原子スケールで分析することで、MA 含有MOX の機械物性、熱物性および照射応答挙動を、MA の種類と量の関数として評価するモデルを構築する。

【目標の立て方】
  • 実験データがないことを前提に、量子力学計算と分子動力学計算によりMOXの物性及び照射応答挙動を予測することに力点を置いた研究で、 極めて挑戦的ではあるものの、適切な目標設定がなされている。
【研究開発計画】
  • 目標に則った計画であり、計算科学分野での研究の進め方としても適切であった。
  • 各年度にMOX物性及び計算科学の専門家を委員とした委員会を開催し、研究開発状況を説明し進捗状況にコメントを受けたことは適切であった。
  • 上記委員会において、検討すべき課題について重要なコメントを受けていたが、委託契約で設定した成果目標の達成を優先させ、研究計画を大きく変更する事を断念されたことは残念であった。解決すべき課題として、今後の研究に反映して頂きたい。
【目標達成度】
  • パラメータの範囲は適切に抑えられており、実験データが少ない現状というかなり制限があるなかであったが、当初の目標は達成されている。
【研究開発成果】
  • 物性評価、照射応答挙動評価の箇所において、実用の観点からの議論が不足しているものの、ポテンシャルモデルの構築等において成果を挙げた。
  • 分子動力学計算による照射応答挙動シミュレーションは優れた成果であった。
  • 今後の課題も明確にされている。
【研究開発の波及効果】
  • MA含有MOX燃料を対象に第一原理計算だけを使って最終的に格子定数、機械物性等について妥当な結果を与えるポテンシャルモデルを構築できることを示すとともに、アクチニド元素へも適用可能であることを示したことから、波及効果が期待できる。
  • 本研究開発で得られたアクチニド化合物のポテンシャルモデルおよびポテンシャルエネルギー曲線は、今後ますます発展していく核燃料の計算科学の研究分野で、重要な基盤データとなると思われる。
  • 実験データの蓄積とそれとリンクさせることで、燃料物性を予測できるようになることを期待したい。
2.総合評価
 評価:S
  • 極めて挑戦的な目標のもと、計画的に研究が進められ、ポテンシャルモデルの構築等で十分に目標を達成し、優れた成果を挙げた。
  • 研究代表者一名で三年間という限られた期間で行なわれた研究開発の成果としては、質・量ともに十分であり、研究代表者の研究力の高さは、高く評価されるに値するものである。
  • MOX物性及び計算科学の専門家を委員とした委員会でのコメントを生かして研究に取り組むことで、本研究の進展が大いに期待できる。
S)特に優れた業績が挙げられている。
A)優れた業績が挙げられている。
B)想定された業績が挙げられている。
C)想定された業績が一部挙げられていない。
D)業績がほとんど挙げられていない。
3.その他
  • 非常に難しい分野なので、常に外部専門家との議論を心がけて、研究を発展させて頂きたい。
  • 成果を広く活用してもらうために、専門家のレビューを受けた論文を、できるだけ数多く発表して頂きたい。

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Japan Science and Technology Agency 原子力システム研究開発事業 原子力業務室